イメージトレーニングの種類と方法

イメージトレーニングの種類には、下記のようなものがあります。なお、これらのイメージ法は、私がわかりやすく区別するために命名したものもあり、必ずしも正式名称ではありません

イメージトレーニングをどこから、どのように始めるかは、あなたの競技レベル、意欲、目的、現状のイメージ能力などで決まってきます。それぞれのイメージ法は、重なる部分もあります。

まずは、それぞれがどんなものかを見ていきましょう。


観察イメージ法

日本人初のNBAプレイヤーとなったバスケットボールの田臥勇太選手は、彼が小学生のとき、当時の憧れであったマジック・ジョンソンが出場していた試合をビデオに録画し、それを自宅の居間で、何度も何度も食い入るように見ていたそうです。

s-CX042_Lそして、体育館での練習で、有名な「ノー・ルックパス」など、マジック・ジョンソンを真似たプレーを何度も繰り返し練習しました。

若き田臥選手のように、憧れの選手のプレーをDVDなどで繰り返しみたり、トップ選手の試合を生観戦したりすることも、実は有効なイメージトレーイングの一種で、私は<観察イメージ法>と呼んでいます。

あなたも、一流選手の試合を見たあとに、自分でも驚くほどの素晴らしい「動き」ができたという経験や、これまで長い間できなかった技術がスムーズにできたという経験はありませんか?

それがまさに、<観察イメージ法>の効果なのです。

テニスのサーブ、ゴルフのスイングなど、テンポやリズムが重要な競技や技術においては、この<観察イメージ法>は効果を発揮します。

<観察イメージ法>は、ジュニアや、競技初心者にも、手軽に始められ、効果が期待できるイメージトレーニングです。このサイトで紹介されている本格的なイメージトレーニングが難しい場合には、まずはここから始めてみましょう。


仮想イメージ法

ピッチャーが投げてくるボールをイメージしたうえで、素振りをする方法を、私は<仮想イメージ法>と呼んでいます。

このイメージトレーニングの例でわかりやすいのは、ボクシングにおける「シャドーボクシング」です。シャドーボクシングは、ひとりで行うボクシングの練習法であり、仮想の状況を想定して、ステップを踏んだり、攻撃を避けたり、パンチを繰り出したりすることです。

このような「シャドー」は、格闘技などの練習ではよく用いられることが知られています。

しかし、仮想の状況をイメージしてから自分の体を動かす、という意味では、バスケットボールにおいて、仮想の相手ディフェンスを避けてジャンプシュートを打ったり、体操競技において、これからの演技を想定して、手の動きだけを行ってみるのも、シャドーといえるでしょう。


成功イメージ法(アファメーション)

北京オリンピックの陸上400メートルリレーでメダルを獲得した朝原宣治選手は、大会後のインタビューにおいて、表彰式でメダルを受けとったときの感想を聞かれたとき、次のように答えました。

「表彰台でメダルを貰うことを何度もイメージしていたため、実際にメダルを受けたとき、現実と非現実を区別できない、なんともいえない感覚でした」

s-CX171_L優勝している自分、表彰台に立っている自分、堂々とプレーしている自分、金メダルをつかんだ自分など、競技における目標を達成した自分をイメージする方法を、私は「実現イメージ法」と呼んでいます。また、「アファメーション」と呼ばれることもあります。

成功イメージ法は、あなたも何度か聞いたことがあるはずです。これは、スポーツ分野だけでなく、社会人向けの自己啓発セミナーなどでもよく使われるテクニックで、自己暗示のテクニックと、イメージを組み合わせたものです。

自己暗示がかかり易いひとを、「被暗示性が高い」と言いますが、被暗示性が高い選手にとっては、この<成功イメージ法>はかなり効果があります。なぜなら、自分自身に暗示をかけて、将来の成功への自信を持てるようにしたり、厳しい練習を耐えたりするためのモチベーションにできるからです。

反対に、被暗示性の低い選手は、真面目に実現イメージ法を行っても、なかなか自己暗示がかからず、イメージトレーニングの効果を実感できない場合が多いのです。

しかし、被暗示性が低くても、この実現イメージ法をきちんとできれば、自分の競技目標を再確認したり、やる気を維持向上したりすることができます。少しずつ、実現イメージ法ができるように、段階的にトレーニングすることが大切です。


 

客観イメージ法

客観的な立場で、自分のプレーをイメージすることを<客観イメージ法>といいます。反対に、自分の主体的な立場で、自分のプレーをイメージすることを<運動イメージ法>といいます。

イメージトレーニングを何も知らない選手に、自分のプレーをイメージするように指導すると、少なからずの選手が、この<客観イメージ法>をやっています。

現在では、色々な競技において、自分の技術を確認するための「ビデオ撮影→動作チェック」が一般化していますから、それを見ている感覚で、客観イメージ法を行うのでしょう。

また、心理学研究からは、感情が入っていない場面を想起すると、私たちは客観視線になりやすいこともわかっています。

<客観イメージ法>は、他のイメージ法と組み合わせて行いやすいものです。例えば、テレビなどに映っている「成功している自分」をイメージしたり(実現イメージ法)、試合のリハーサルを行ったり(予行イメージ法)することも可能なので、これを利用してみるのもありでしょう。

また、<観察イメージ法>と同じく、テンポやリズムが大事な技能においては、効果的です。

ただ、私の考えでは、<客観イメージ法>の効果は限定的です。<観察イメージ法>と同じ効果は期待できるのですが、次に見る<運動イメージ法>の最大の効果である「運動ネットワークの強化」に繋がらないからです。


運動イメージ法

第三者の立場で自分の動作をイメージする<客観イメージ法>とは異なり、自分の主体的な立場で、自分の動作をイメージすることを「運動イメージ法」といいます。

私が考えるところ、この運動イメージ法こそ、トップアスリートに求められる「集中力」「技術習得と維持」「怪我の予防」を実現してくれる究極のメンタルトレーニングです。

s-CX178_Lまた、この運動イメージ法を極めると、競技の直前に行うことで、しかるべき動作の「デジャブ(既視体験」を起こし、ゾーンが起こりやすくなります。

今、右腕を伸ばして、肩の高さに上げてから、肘を90度に曲げてみてください。そして、その動作を3回ほど繰り返し行ってください。

次に、目を閉じて、先ほど行った「動作」を、頭の中だけで再現してください。

如何でしょうか?腕を動かさなくても、動かしている感覚イメージを作り出すことができたのではないでしょうか?これが<運動イメージ法>です。

このような簡単な動作であれば、<運動イメージ法>はそれほど難しくありません。しかし、イメージする動作が複雑で繊細になればなるほど、その運動イメージを作ることは簡単ではなくなるからです。

あなたの競技課題に置き換えて、やってみればわかると思いますが、複雑な動作を、リアルにイメージするには、集中力が求められます。続けるにはなおさらです。

CF044_Lしかし、にわかに信じられないかもしれませんが、この運動イメージ法を地道に繰り返し行うと、あなたは実際に体を動かして練習しているのと、同じような効果が得られるのです。

イメージによる運動技能の上達効果は、厳密な実験によって証明されている事実です。さらに今では、そのような効果が発生する脳内メカニズムも分かっています。

しかし、<運動イメージ法>は、そのほかのイメージ法とは異なり、繰り返されなければ効果はほぼ実現されません。前述のとおり、集中力がないと続かないこともあり、多くの選手が、その効果を体験する前に、挫折してしまうのが現状です。

挫折してしまうのは、我慢が足りないだけでなく、<運動イメージ法>を行う準備ができていない場合が、ほとんどです。自分のイメージ力に見合うレベルから始めないと、なかなか続かないのです。

私のコーチングでは、いくつかの段階を踏みながら、正しく<運動イメージ法>ができるまで、しつこくクライアントに指導します。アスリートにとっては、この運動イメージ法が最重要であり、このイメージの習得を目指して、励んでほしいと思います。


メンタルリハーサル

メンタルリハーサルは、本番で力を発揮するために最も重要なイメージ法です。リハーサルという言葉のとおり、本番を頭の中でリハーサルすることですが、長くなるので、別ページで説明します。
>>メンタルリハーサルとは?


如何でしたか?ほとんどが、どかかで聞いたことがあるイメージ法が多かったと思います。

「イメージトレーニングの効果」のページに書いたように、イメージトレーニングの効果には、ゾーン体験、モチベーションの持続、トラウマ・イップスの克服、技術習得と定着化、怪我の予防、感情のコントロールなどがあります。

その効果を実現するためには、目的に沿ったイメージ法を選択する必要があるのは言うまでもありません。改めて、それぞれのイメージ法の解説を読んだうえで、自分にとって必要な、優先順位の高いイメージ法はどれなのか、ぜひ考えてみてください。