メンタルリハーサルで本番力を高める

本番で力を発揮するために、最も大切なイメージトレーニングが<メンタルリハーサル>です。この言葉のとおり、本番を頭の中で何度もリハーサルするのです。

スポーツ選手の中には、初めての試合会場や、大勢の観客の前など、普段とは異なる試合環境に入るだけで過緊張に陥ってしまい、本来の力を発揮できなくなってしまうことがあります。

s-CX153_L人は不慣れな環境に置かれるだけで、ストレスを感じ、緊張します。これは動物にも見られる本能的な反応です。しかし、徐々に環境に慣れていき、ストレスを感じなくなっていきます。これを心理学の専門用語で「順化(馴化)」といいます。簡単にいえば、「慣れ」ですね。

プロ野球選手たちが、数万人の大観衆の前でも、それほど緊張することなく、自分の力を発揮できるのは、高校・大学・社会人など、それなりの大舞台を経験してきているからです。

それでも、WBCの試合などでは、あのダルビッシュ投手ですら、自分の力を発揮するのに、しばらく時間がかかってしまいました。

メンタルリハーサルは、この順化のメカニズムを利用したものです。

事前に試合会場や試合の流れなどをイメージでリハーサルしておくことで、不慣れな環境に慣れたり、突然のアクシデントなどにも動揺しないようにしてしまおうというものです。

また、競技によっては、試合の展開を事前に予行することで、試合に向けて、しかるべき準備ができることもできます。

注意点としては、いきなり「さあ、メンタルリハーサルをやるぞ!」と思っても、イメージが中途半端になって、うまくできないことがあります。私が勧めているのは、まずは事前に、しっかりと想定プラン(シナリオ・脚本)を作ることです。そのうえで、できる範囲で、主観的、客観的に、本番をイメージしていってください。


<2018年6月追記>

私が、メンタルトレーニング石井塾で、これまで大勢のアスリートを指導してきて思ったのは、選手たちの多くは、普段、血のにじむ努力のなかで、練習に取り組んでいる割には、本番に向けての準備が「圧倒的」に少ないことです。これは「あがり症」のアスリートに限らず、多くのアスリートにいえることです。

「普段から、しっかりと努力していれば、本番で自然と力が発揮される」と思っているのだと思います。アスリート本人だけでなく、監督やコーチもそのように考えているひとが多いと思います。

しかし、私からすると「本当にもったいない!」のです。

トップアスリートの競技現場では、本当に小さいところの差で勝負が決まります。それでは、この小さな差がどこで生まれるのかというと、普段の練習で培った技能が、本番で、どれだけ早く、正確に発揮されるかに尽きるのです。迷いなく、体が勝手に反応してくれる状態です。これがいわゆる「ゾーン」とか「フロー」です。

メンタルリハーサルは、事前に本番を何度も、様々なパターンで想定することで、ちょっとした想定外のことが起こっても、迷いなく体が動くようにしておく準備なのです。メンタルリハーサルは、何度もやればやるほど、そしてリアルであればあるほど、脳のなかには刻まれていきます。それはイコール、そういったことが起きたときに迷いなく体が動くようになるということなのです。

難しいのは、競技によって、このメンタルリハーサルのやり方はかなり異なることです。野球、ゴルフ、射撃、相撲など、本当に色々ですし、陸上や体操などの種目と、テニスやバスケットなどの種目でも、そのやり方は異なってきます。

アスリートが起こしがちな間違いは、このメンタルリハーサルと<成功イメージ>を混同してしまうことです。成功イメージは、望ましい展開をイメージすることですが、実際には、そのような展開になることは、常に金メダルを狙える選手だったり、相手がいない競技(水泳・陸上など)の選手以外であれば、非常に稀です。

成功イメージは、本来は、モチベーション向上のためにやるべきものであり、本番で力を発揮するための準備(=感情コントロールやゾーン)のためにやるものではないのです。

むしろ想定すべきなのは、現実的に起こりうる様々な「小さな事件」です。例えば、スケート競技では、自分の滑走前の選手が転倒して、競技開始が少し遅れることは良くあることですし、ゴルフや射撃では、雨や風が急に強くなることも起こり得ます。こういったことをどれだけ想定するかです。

どの競技にせよ、トップ選手というのは、こういう想定を普段の練習からやっているものですが、試合直前に、あまり体に負荷をかけることなく、本番準備ができるという意味では、メンタルリハーサルをやらない手はないのです。

私が、メンタルトレーニング石井塾で指導したアスリートのメンタルリハーサルに関する体験談を紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。

>>メンタルトレーニング体験談(ショートトラック・女子日本代表)

>>塾生(格闘系女子)からの報告20150212

>>緊張をコントロールできるまで 塾生の「父親」からの報告